大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

広島高等裁判所 昭和48年(ラ)16号 決定

抗告人

松浦邦雄

右代理人弁護士

松永和重

右抗告人申立の松江地方裁判所昭和四八年(ソ)第一号有体動産仮差押命令申請却下決定に対する抗告事件につき、

同裁判所が昭和四八年八月八日にした抗告棄却決定に対し、右抗告人から再抗告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件抗告を却下する。

理由

抗告人の再抗告の理由は別紙抗告理由書記載のとおりである。

本件は、有体動産仮差押命令申請却下の決定に対する抗告を棄却する旨の決定に対し更に抗告の申立をしたものであるところ、民訴法第三九三条第三項が仮差押および仮処分に関する判決に対する上告を禁止した法意に照らし、仮差押および仮処分に関する決定・命令に対しても、再抗告は許されないと解するのを相当とするから、本件再抗告は不適法として却下すべきものである。

よつて、主文のとおり決定する。

(宮田信夫 弓削孟 野田殷稔)

再抗告の理由

一、原決定の抗告棄却の理由は要するに財団債権についても破産法は破産管財人に対し、破産手続の進行に応じその合理的判断にもとづき適正な弁済を期待しているのであつて強制執行は許されないと解すべく、従つて仮差押することも許されないというにある。

二、右に対する抗告人の主張は左記のほか原裁判所に対する抗告状の抗告の理由に記載のとおりであるからここに之を援用する。

三、本件抗告人の財団債権は不動産賃貸借の先取特権を有するのであるから抗告人はこれによりその弁済を確保できる。(破産法第五一条)しかして右先取特権の目的物は「賃借人が賃貸借の結果或時間継続して存置するため其建物内に持込みたる動産たるを以て足る」ものであり(大判、大正三・七・四・大判・昭・八・四・八)右目的物が第三取得者に引渡されることにより消滅する。(大判・昭一六・六・一三)

ところで破産管財人は抗告人の右先取特権を保障するために本件建物内における破産財団所属有体動産を第三者取得者に引渡することをしないとか、又破産裁判所がそのため監督権を発効すると期待ができるであろうか、その法的保証はどこにもない。債権者はかかる場合能動的に自己の権利擁護のために仮差押ないし仮処分の申請ができない筈はない。

この点からしても原決定には法令の違反があり、右違反は決定に影響を及ぼすこと明らかである。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例